リクエスト ゴルカイセシSS 1

 

「関心はせんな。」
「あんたに言われる筋合いはない。」

 決して軽くは無い怪我を負ったままカインは、私の腕の下で剣呑な色の瞳の侭、それでも明らかに痛みを堪えた声でそう言った。

  

 
 セシルが光を取り戻してからも、戦闘はより厳しさを増していった。
 残された時間も少ない今、二手に分かれ捜索をする事を我々は選んだ。一塊で動いては、万が一の時に取れる手立てが限られるという理由もあった。
 かつての主力にセオドアと私を加えた少数で行動する我々は、より危険な気配の漂う場所を選び先行していた。
 先には案の定、恐らくは異界のクリスタルより記録を再生されたであろう、強力な異形の者が潜んでいた。それは数体を辛くも撃破して集合地点へ向かう途中の出来事だった。
 今少しという思いが油断を呼んだか、思わぬ敵に背後をとられた。レッドドラゴンが2体とクアールレギナが1体。不意打ちに召喚士の娘が倒れ、竜のブレスがこちらの系統を乱し大きなダメージを与えた。引き受けきれなかった一尾の竜がセオドアに向かう。その前に立ったセシルに一撃が振り下ろされるより早く、天空より蒼い竜が降下した。
 狙ったのだろう。それは地盤の緩くなったその着地点を貫き、諸共階下までかなりの高さを落下していった。
 魔物も又、それで一瞬統制を失った。一撃を放ち目眩ませた所で、ファブールの僧王が指揮を執る別働隊が駆けてくる姿が視界に入った。戦力の確保を確認し、私は「退路を確保して来い」とセシルに告げ、久方振りに浮遊魔法を帯び、二尾の竜を追って空洞に飛び込んだ。

 手負いの竜はブリザガの一つで沈む程の致命傷を負っていたが、諸共に飛び込んだ薄水色の竜も又、かなりの深手を負っていた。
 そこ彼処に点在する裂傷と擦過傷。流れる血液の間から肉が見える。手持ちのハイポーションをかけるが、止血程度にはなれど回復には程遠かった。
「自己犠牲はセシルの専売特許とばかり思っていたがな。」
 僅かに抵抗を見せた身体を強引に担ぎ上げ、近くにあった小部屋まで移動して岩肌に凭れかけさせ、そう言い放つ。
「…今のあんたに言われる、台詞じゃないな。」
 途切れ途切れにそう返してくる。元よりカインのMPはその前の戦いで殆ど消耗しきっていた。己に回復魔法を掛けるだけのゆとりはない。
 この男にこれだけの手傷を負わす。それだけ、此所の魔物は強いというそれだけの事。だが少しだけ、浅く呼吸を繰り返すその姿に、腑に落ちない何かが私の中で鎌首を持ち上げた。

「…死ぬ気だったか。」
 そう言えば、臥せていた蒼い目が開かれ私を見た。
 あまりに無謀な突撃だった。後先等、明らかになにも考えていなかった。
「いや。まああいつを死なせるよりは俺の方がずっといいと、そう思ったのは確かだがな。……俺も少しは聖騎士らしくなったか?」
 そう返し、痛みを堪えた顔でニヤリと笑うカインに、何故だか酷く腹が立った。

 そうして私は、一時正気を失い今に至る。

 

 

 

「っ…!」
 突然に岩肌に押し付けられた身体が痛むのだろう。カインは僅かに呻き声を上げた。
「な…にを」
「お前は何時迄経っても己の価値を理解せんな。」
 意図を判じかねる、といった表情のカインをそのまま置いて、鎧の裂け目から見える、胸の赤黒い傷跡に触れ、思い切り爪を立てた。
「いっ…!」
「何だ、痛むのか。あれだけ躊躇無く飛び込むのだ。痛覚など感じない様にでもなったのかと思たのだが。」
 そんな訳無い、と目だけで訴えるそれに目だけで返す。自然口角がつり上がった。奇妙な愉悦が沸き起こる自分がどうしようもないなと思いもしたが、止める気も起きはしなかった。
 湧き出る脳内麻薬を止める気にもなれない。
 高揚する。

「それとも、自分を痛めつけて喜ぶような手合いになったのか。良い趣味とも思えぬが、ならば幾らでも手伝ってやろう。」
「な…!?」
 止めろ、と続けられる前にもう一度傷を抉る。悲鳴を噛み殺す気配。止めた息が吐き出される前にそこに舌を這わせれば、ぶるりと手足が震えた。私の腕を掴む指先が皮膚に食い込むも、強く押し返される事は無かった。

「死ぬなら、私の腕で死ね。」
 するりと出てきたその言葉に、内心自分で苦笑いをした。

  


 組み敷かれる身体にさして抵抗は無かった。

 覚えているのだろう。
 私は最初に、こうして、この男を籠絡したのだ。

 ミストの大地震で軽くはない負傷を負ったカインに同じ事を施した。
 痛覚と快楽の狭間で正常な判断をそぎ落とす。
 正気と狂気の狭間でその心を見失わせる。
 そうして揺さぶられ剥き出しになり、堕ちた心を、拾い上げ…私はこの男を黒く染め上げたのだ。

 ずきりと痛んだ己の内は無視した。

 

 
 この後に何が起こったのかも、当然カインは覚えているだろう。

 

 
「…っめろ! これ以上は…本当にっ…あいつに、顔向けできなくなるから…っ!」
 予感に怯えたのか、ついにカインは悲鳴を上げた。
 顔を上げ見やれば、目に浮かんでいるのは生理的な涙か。

「あんただってそうだろ…!?」
 睨むような、懇願するかのような目でこちらを見る。昔の様にニヤリと笑ってやった。
「…如何かな。私は青き星に留まるつもりはない。今だけ騙しおおす程度の事、容易い。」
「っ…ゴルベーザ!!」
「…望んでは居ないのか?」
 そう言えば、面白い様にカインは固まった。

 

 

「…冗談だ。」

 そう言って含み笑い、手を離してやった。もうひとつ残してあったハイポーションを頭上から掛けてやる。
 暫しの間の後、ようやく呼吸を思い出したらしいカインは、水揚げされた魚のように口を開け閉じした後、漸く出す声を見つけ出した。
「……っ タチが悪過ぎるぞあんた!!」
「何だ。今更。」
 思わず笑みが落ちる。歳を経て少し自分にゆとりが保てる様になったようだが、こうして一皮剥けば昔と何ら変わらないカインだ。 それを確認してこうも喜んでいるのだから、確かにこの男の言う通り、相当私の性質は悪かろう。 

 

 こうして、これ以上踏み込んでは立ち行かぬ瀬戸際で、またカインを置いて行くのだから。

 

 


 ゆるりと私は立ち上がる。
「これに懲りたならば、もう馬鹿な真似はせぬことだ。」
 さも理だと言わんばかりに言い切ってやれば、幾度も聞いた言葉が返ってくる。
「だから…おまえに」
「何だ、まだ仕置きが足りんか。」
「っ……わかった…。」
 予想の範疇だったので言葉尻を盗り切り返してやれば、これ以上は勘弁してくれとばかりにカインは両手を上げた。

 

「セシルにはお前が必要だ。あれの心は離れてあってもお前と共にあった。今またその願いを裏切るというならば、次は容赦せんぞ。覚えておけ。」
「…あんたに言われるとはな。」
 少々の苦笑いを含めた、半ば呆れたような…諦めたような声でそう返ってくる。
「お前の過ちは私の罪だ。ならば始末はこの手で付けよう。」
「それもそうだな。」
 不思議な間柄になったものだ。そう思うのはお互い様と言ったところだろうか。

 

 足音が聞こえる。セシル達が降りてきたのだろう。
 居場所を知らせるべく私は一歩踏み出した。
 ふと、その背に声がかかる。
「…同じ事、お前にしてやれるヤツがいればいいのにな。」
 首だけで振り向いた。
「何だ、見たいのか?」
「……悪い。見たくない。」
 自分の言葉の意味合いを今更確認して頭を抱えたカインに、思わず笑いが溢れてしまった。

「お前は死ぬな。」
「あんたもな。」
 互いにそれだけ告げ、私はカインの身を駆けてきたセシルに預けた。

 

 

 お前の心を無理矢理にでも拾い上げるヤツがいればいい。

 

 今は聞こえぬ筈のカインの声が聞こえた気がした。
 気のせいだろう。

 

 遠き異説に、そんな男もいたような気がしたが。

  

よし!俺至上最高のエロSS完成!!もうこの上はないぜ!!!( ゚Д゚)

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剣乃晴夜さまの『ゴルカイセシ3人詰め合わせ腐度及びシチュエーションはおまかせするッ!〈゜д゜〉くわっ』
の、ゴルカイパートをお届けいたしました!!
裏テーマ「TAの公式時間軸で『(ゴルカイ・カイセシ・ゴルセシ)+セオドア』は可能なのか!!!

…で、できているだろうか…?

 

兄さんは心配したんです。ただ心配の仕方にちょっと慣れてないだけなんです。不器用すぎるだろう兄さんなんて愛らしいドS。こっちのパートはすばらしい手応えでした。書いててチョーー楽しかった!
ゴルカイの基本はやっぱり言葉攻め微SMだと思いますとも!! 鬼畜ゴル様バンザーーーイ!!
DS版やDFF、TAで受でもいけるようになったゴル様ですが、やはり俺の中で基本はここだな。うん。
S一周してMでもいけるようになったカンジのゴル様が現在の俺の好みです。単純にゴル様=ドS セオきゅん=M でもいいけど。