「セオドールたっけてぇええええ〜_| ̄|◯」
「…なんだアリシア、研究…は関係ないなその様子だと。」
「うんめっちゃ私事。またさあー、入稿したデータと届いた本の表紙の色全然ちがうのよぉ〜。これで3度目なんだけどさあ、これってあたしのパソコンが悪いの? ねぇ〜…。」
「…ああ…。それは中々色々な要因が絡んだ問題だな…仕上がりはそれか。」
「ちょ!中は見ないでよ中は!!」
「判ってる。(見たいとも思わないし) …私には良く見えるが、大分違うのか。」
「ピンクと緑が壊滅的。めっちゃ濁ってるんだけどどういうこと!? 見本もつけて送ってんのよぉ! なんでそんな変わるの!!」
「……私は印刷関係の事にそれ程詳しくないが、それでもいいか。」
「いーわよ。世間一般より詳しいと思うから。」
「…そうか。印刷の色というのは、我々が思うよりずっと深くて難しいものではある。それを前提とした上で、まず一番大きそうなところから行くか。」
1.CMYK編
・色についてちょっと多分中級知識
「。ならピンクと緑が駄目だと言うなら、RGBのまま作業しているだろう。ファイルを新規作成の時にカラーモードを変えているか?」
「サイズと解像度しか触った事ない。」
「なら1番大きい要因はそれだ。違いは判るか?」
「CMYKがインクの色・減色法だってのは知ってる。RGBも光の三原色・加色法ってのくらい本つくってりゃなんとなく学ぶわよ。」
「ん、そうか…。ならその辺りは割愛だ。
CMYKというのが便宜上、色を十段階に表現出来るものだとしよう。その場合RGBというのは… あ、いや待てよ。ソフトはフォトショップか? もしくはElementsか?」
「たっけぇPhotoshopよ。学生時代に買ってからバージョンアップしてる。」
「ならAdobeRGBがデフォルトかな…? CMYK10段階に対して、AdobeRGBは18段階くらい、sRGBが8段階くらいだと思え。」
「Adobe多!」
「お前はそのAdobeRGBで色を指定してしまっているのだ。そのピンクや緑というのは15段階目くらいに当たるのだろう。出なくて当たり前だ。」
「そ、そういうことかぁぁぁああ!!」
「特に彩度・明度の高い緑に、CMYKは壊滅的に弱い。ピンクと鮮やかな青も然りだ。エメラルドグリーンは敵だ。RGB指定というのはあくまでモニターに色を出力する際の電気的な色なのだ。それを紙に出せという方がそもそも馬鹿とも言える。ちなみにsRGBというのは、CTR…ブラウン管ディスプレイの頃の、『この範囲なら誰でも見られますよ』という標準の色だな。Webサイト作成等に使われた。今はモニターも高性能になっているし…それ程気にしないのかもしらんが。」
「がっつりエメラルドグリーンで背景塗った…!_| ̄|◯」
・色にだって限界はあるんだ!
「ところでデータは持ってきているのか?」
「言うと思ったからあるわよ。」
「どれ…。成程、RGBデータで…背景が海でエメラルドグリーンか…。これは出ないな。」
「く…! 同人素人に切って捨てられるとは…!! 綺麗に塗れたからチョー気に入ってたんだけどこれぇ。」
「ふむ。色は何を使って選んでいる。カラーピッカーか?」
「名前なんか知らないけど、ツールの下にある描画と背景色設定できる…これ。」
「ピッカーだな。それも多少厄介ものだなぁ。」
「えーーーーーーなんでーーーーーー便利なのにーー」
「このカラーピッカーというのはだな、CMYKともRGBとも違う、遥かに広い色域をも選択出来てしまうツールだ。Lab方式だとかHSBだとか…詳細はwikiあたりに任せるが、例えばLabの色域は人間の認識出来る色全てを再現できるとされている。」
「え、なんかすごいじゃん。それじゃ駄目なの?」
「そうだな…最終的にこれをどうしたいのか、ひと先ずはそこを確認しようか。」
「印刷に出したい。」
「そうだな。ではそれを踏まえた上で。」
「はいはい。」
「先程説明した色域…色の表示可能範囲。この場では分かり易く段階という概念で統一しよう。印刷用CMYKが10段階 モニタ色Adobe RGBが18段階が限界とすると、Ladはまあ、25段階あたりにしておこうか。
言っておくがこのあたりは便宜上の簡易表現だ、かなり適当だぞ。モニタも正しくはAdobeRGBじゃないし。」
「あいあい了解。(マジ説明されたら数式出てきそうで御免だわ)」
「でだ。例えばLabで緑25段目を指定したとする。モニターの色域はRGBだ。さあ画面上にどう出る?」
「…え、どう出るの? えっと…限界の18かな??」
「正解だ。」
「いえーいヽ(・ω・)ノ」
「ではそれを印刷に出すと?」
「……え、ちょっとまって… それって…。なんかヤな予感しかしない。」
・じゃあ、やってみよう。
「だろうな。では実際やってみるか。まず新規でファイルを作成する際にカラーモードをCMYKにする。」
「…ね、すごい不思議だったんだけど、この『詳細』にある『カラープロファイル』ってなに?」
「ああ、それも割と重要だなぁ…。まあそれに触れると少し別の話になるので、今は後回しだ。せっかくだから「Japan Color 2001」にしておけ。先取りするなら、それが日本の標準色分解だ。」
「ふーん…じゃあまあ一旦鵜呑みして忘れるか。」
「そうしておけ。ファイルを作ったら、何時もの方法で件の緑を塗ってみろ。」
「えーとピッカーを緑にして1番右上狙うと。
……ってちょっと! 塗ったらすげーくすんだ!!! なにこれ!」
「それが、CMYKにおける緑の最高10段目、最も鮮やかな緑ということだ。つまり、ピッカーでは印刷に出せない色まで選択出来てしまうということになる。書類がRGBモードだと、困ったことにモニターにも表示されてしまうのだ。だが当然…」
「印刷には出ない…。こ、こいつが全ての原因かああああ!!!!」
「じゃあRGBモードなら塗れるじゃないかと書類設定を変えたくなるところだが、前述の通りそれは光の色表現だ。インクではない。印刷屋はそんなもん出せないからインク用のCMYKに変える。当たり前だが変えねば印刷できんのだ。そして結果は、やはりこういう色になる。場合によってはもっと酷くなる。強引にあとから変換するわけだからな。」
「_| ̄|◯ このエメラルドグリーンは……なんとも…ならないのか…」
「ならん。そもそもの概念が違うからな。ちなみに家庭用インクジェットで出すと、多分ある程度RGBの色身は再現出来てしまうぞ。その見本がそうだったのだろう。」
「うんそう。だからいけると思ったんだけど…なんで?」
「家庭用プリンタのインクは、そう言う事を知らない人間が満足出来るような色合いに初めから調整されているのだ。」
「なんという孔明の罠!!」
「大体、最近は6色インクでカラーを出すだろう。」
「ノー! すでに4色ですらねぇーーーー!!」
「そういうことだ。あれは大雑把にRGBとCMYKの中間色域だと思えば良いのだろうか。例えるなら15段くらい出してしまうとか。まあそのあたりは機種によりけりだろうから適当に言っているが。」
「もうプリンターが信用出来なくなった…!!」
「そうなるだろうなあ。つまりプリンター出力どおりに印刷をしろなど、土台、無理な話なのだ。電気信号を紙に出せと言うよりマシだが、色鉛筆の色を水彩で再現しろと言っているのと無茶具合は同じだろう。そもそも画材が違うのだ。だから印刷会社はインクジェットプリンタなど使わん。」
「えーと…つまり…ようするに結論は…?」
「この色誤差を少なくする為には、初めから再現不能なものはモニタでも表示されないよう、CMYKモードでCMYKの色指定を使って作るのが一番妥当という事だな。
インクジェットの出力紙は、あくまで目安であり壊滅的なデータの破損やズレがないか確認するための物。『色見本』には成り得ないと知っておくことだ。」
・そんなんどこでやれってぇのよ!
「じゃあさあ…CMYKの色指定ってどうやんのぉ…? ピッカー以外しらないんだけど。」
「1番判りやすいのは、ウィンドウから「カラー」パレットを出してスライダー調節にすること。初期状態ではRGBだが、▼ボタン内にCMYKがある。」
「おお! なんか一杯出てきた。気にもしなかったわこんなトコロ…」
「慣れるとこれのほうが意図した色味が出せるようになるらしい。下部右側で白色と黒色が選択できるから、それがいわゆる「真っ白・真っ黒」だ。ピッカーのスポイトでは正確にはとれんから、このあたりも便利だ。」
「んでも見た目に色取りにくいわよこれ! 数値なんてわかんないっつーの!!」
「まあなあ。数値による色指定は、それなりに場数を踏まないと覚えられんだろうしな。それなら……カラーピッカーで従来どおり選択してみろ。さっきのエメラルドグリーンあたり。」
「へいほー」
「『新しい色」の右側に『!』マークが出たら、それは色域外、印刷に出ない色だ。」
「…けっこうあっちこっちで出るんだけど。つかエメラルドグリーン全滅!?」
「だから敵だと言っただろう。で、「!」の下にある小さな四角。それがCMYKで出せる最も近しい色だ。」
「クリックしたら禿ズレた……!!!」
「要するにそういうことなのだ。印刷すると色が変わるということは。」
「…結論:無理は無理。限界を知れ。 ってところですか…」
「そうだ。いい学習をしたな。(笑)」
「うう…CMYKの色に慣れるっきゃないのかあ……」
「画材によって使い分ける感覚と同じと思えば良いのではないか? 油彩と水彩と色鉛筆でで同じ様に色を塗り分ける人間はおらんだろう。」
「なるほどそれなら納得、考え方の問題ね。まあ詭弁っぽいけど。」
「世の中なぞ考え方ひとつ。そんなもんだ。ちなみに中の人は逆に、RGBのビビットな色が不自然に見えて仕方ないらしい(笑)」
「それもどうなのww」
255段階×3色も色おぼえられるか!!ヽ(`Д´)ノ
・豆知識
「ああ、ものは試しだ、もう一度入稿したデータを開いてみろ。」
「間違ってると知ってから見るとこっぱずかしいわねおい…。ああー、緑が異様に綺麗に見えるー。」
「見事なRGB色だからな。フォトショップには『ビュー→色域外警告』というものがある。RGBで作った画像の、色合いが再現不可能な箇所がグレ―で表示される。」
「おおおおお!!! 華麗に緑全滅_| ̄|◯」
「同じく『色の校正』で、CMYKにしたらどんな色になるのかを見れる。」
「あー…くすんだくすんだ。なるほど本に近いわこれ…」
「Webに使い回すためRGBで作ったデータ等は、それで印刷の色を確認出来る。その上で補正なり塗り直し等をしてやることも出来るな。ただそれはあくまでRGBデータのまま、試しに表示しているだけだからな。入稿時にCMYKに変換する事を忘れるなよ。」
「変換はこれね。イメージ→モード→CMYK…うっほ、変わった(;´∀`)」
「その変換方法にも何種類かあるのだが、そこまで立ち入ると非常に長い話になるので止めておこうか。」
「うん、とりあえずこれでもういい…脳が絶望でパンクしそうよ。」
・自分でコピーすればいいじゃないかッ!?
「そだ、印刷所入稿はわかったけどコピー本なんかの時は? あたしずっとRGBでやってたけど。」
「カラーページををインクジェットで量産ならRGBでもLabでも好きな物を使えば良い。出たものが完成品だから幾らでも試して出力して自力で調節しろ。ぶっちゃけプリンタ固有の誤差が大きすぎて一概には言えない気がする。それでも確実に出る色だけモニターに表現したければCMYKにするのが良いかもしれんなあ。CMYK領域をカバーしていないプリンタなど、今時無いだろうから。」
「わりとお好みの世界か。データをコンビニコピーもってって量産するときは?」
「無理矢理CMYKに分解されるはずだ。印刷所以上に哀れな色になる可能性を秘めているから、最初からCMYKで作れ。」
「はーい…。やっぱ駄目なのか。」
「CMYKに慣れて限界を知るということも大事だな。そういえばプリンタとモニターの誤差要因に心当たりが無い事も無いが…これも重い内容になるから次回に回そうか。」
「(Σ続き決定!?)」
・意地でも綺麗な色を出したいんだ!!
「あとは採算度外視でどうしてもCMYK色域外の色を出したければ5色、6色印刷にするという手があるがな。」
「5色? なんか聞いた事あるような。」
「CMYK4色では足りない部分を、蛍光特色などを入れて補完する技術だ。そういうのも有るんじゃなかったか?」
「あー、思い出した! あるわ5色とかKP差替えとか。あー、あれってそういうことだったんだ! 肌色が綺麗になるとか。」
「うむ、その『綺麗になる』というのが如実に印刷の概念を表しているな。学術的な資料でもない限り重要なのは再現性ではなく、見た目にどれだけ美しく感じるかということになる。そのあたりを取り違えても、おそらく満足の行く印刷結果を出す事は、ハイレベルになればなる程難しくなるだろう。」
「結果を何処に求めるか、ってことなのね。確かによく見りゃ、どの色だってびみょーに見本と違うわ。綺麗だから気にしなかったけど。」
「だろうな。美しさという視点に立つなら、5色6色印刷が良いだろう。その分、刷版…版木のような物だな。それが増えるから料金は跳ね上がるだろうが。」
「高いわ_| ̄|◯ オンデマンド印刷で5色とか差替えとかないのかしら。」
「あれは要するに高性能プリンターのことだろう? ただ折りまで自動というだけで。 なら機械の中にすでにインクがセットされている。やるとしたらコンビニのプリンターのインクを挿げ替えるようなものだろう? 有るのかな…あるのかも知らんが、安く刷るという同人オンデマンドそもそもの目的に照らすならどうかな…。先にオフセットにしろと言いたいが。」
「入れ替えればいいじゃんー。」
「印刷機の特色インクといういのは現場で調合するのだ。だから印刷工の技術は必要だが無駄がなく融通が利く。オンデマンドはそうもいかんだろう。メーカーが作らないとどうもならん。割高になるんじゃないのか?」
「ままならないわねーー!」
「まあ、そう言う声が追々吸い上げられていくのだろうな。将来的に安く出てくるかもしれん。」
「ってあったぞおい!」
「調べるの早!!」
「メーカホームページだ…。オプションのようだが、機械そのものはあるんだな。あとは印刷会社の対応次第なのか。」
「同人にはまだこないかなぁ。一般普及してからかしら。」
「…こればかりはなんとも判らんなあ…。これから主流がipadの電子ブックなどに取って代わられたら、むしろ印刷物のメインは同人の方になる…なんてこともあるかもしれん。だったら案外早いかもな。」
・余談的裏技。
「じゃ、写真集なんかですっごい綺麗なビサイドの海なんかは5色刷りだったりするんだ。」
「そうだな。それともうひとつ、『比較』を使って美しく見せかけるという手も使っているそうだ。」
「……具体例をぜひ。」
「単純な話だ。白の隣に黒をおけば、白はより鮮やかに見える。同じ白の横にグレーをおけば、不思議とくすんで見える。美しい海に見せたいのなら、その周りを少し落とせということだ。」
「錯覚かい!」
「そういうことだ。人間は色というものを他と比較して相対的に判断するものだ。特に明度は重要になる。綺麗=明度差=コントラスト と考えておいて、素人のレベルでは差し支えないのではないかな。さっきのエメラルドグリーンも背景が白なら哀れなくすみ具合だが、黒や濃い色合いにして白でハイライトをいれてやれば…」
「あ、なんかさっきより綺麗に見える。」
「それが色調整というものだ。そうやって付き合って行くのがDTP…印刷の世界なのだろう。」
「深いわー…」
「ちなみにメラルドグリーンは、プロの写真家でも一番頭を悩ませる色だと読んだ事があるな。」
「そんなに厄介な色だったのか…」
「さらに完全に余談だが、プロの色調補正はトーンカーブを使う。これはCMYK各要素に対して個別に色の調整が出来て、且つコントラストや微妙な調整がやりやすいからだ。」
「これ、よくわかんないんだ…_| ̄|◯」
「それこそ説明が長くなるから割愛するが、単純なところで少しS字になるように右上付近を上げ、左下付近を下げるとコントラストが強くなる。」
「お! ホントだなんかちょっと綺麗になった!!」
「これはRGBをCMYKに変換してくすんだ画像に特に有効だ。大分違って見えるぞ。」
・お疲れ様でした!
「おっけーあんがと。いい勉強になったわ…」
「と、まあ、これが印刷における色変化の最も大きな要因な訳だが、他にも考えるべき点が幾つかある。」
「(う…! すっげぇ話したそう! めちゃめちゃ瞳が輝いてるんですけど!!) あ、あたし次回の原稿があるから早速…」
「ところで、セシルがさっきケーキを持ってきたのだが、食べるか? フルーツファクトリーだかという…」
「そんなものに釣られるクマーーーー!! お茶入れてくるからまっててー!!」
「・・・・?」 ←他意なし
中の人ツッコミ:なのに何故コミスタのカラーモードにCMYKが無いのか謎過ぎる!!! おまえは100%印刷目的じゃねーのかと問いたい! あれか、今時Webで発表しろとそういうことか! …まあ、容量とか価格とかでそんなに色モードを入れられないというのとか変換機能がのせられないとかだからといってCMYKだけじゃ色域たりないとかそういう事なんでしょうが理不尽だろう_| ̄|◯
なんどもいうよ。俺はこういう専門学校いってないよ。
ほぼ全部、会社のDTPワールドバックナンバーで読み知ったことと体験だから、ウソかいてても怒らずにそっと教えてね…v
いちおう検索こいて裏はとってるつもりですとも。