ティーダとクラウドのゴルベーザ談義

 

「ってことがあったッス。」
「…それは分かったが、なぜ、俺に?」

 魔導研究所の一角。ティーダはそのへんの太いパイプに座って。クラウドはそのへんの壁にもたれかかって会話していた。
 なんでここかというと、セフィロスは研究所然としたこの場所をあんまり好んでいないらしく、用がない限り訪れないからだ。用があれば別に問題なく通るのだが。いわばクラウドのストーカー対策だ。
「や、アンタが一番話しやすそうだったから。」
「…俺が、か?」
「訂正。一番人間っぽかったから。」
「…。」
 合点は行かないが納得せざるを得なかった。
「…中身、入ってたんだな…。」
「やっぱそう思うだろ! 案外美形っつうか、悪くない顔だったっスよ。あとちょっとイイ人っぽかったんスよねー。すっげ意外でさ、誰かに喋りたくて。」
「ああ…。そういう気持ちはわからなくもない。」
「だろー! よかったやっぱクラウドは人間だったッス!」
「…。」
 どうも思ったことがそのまま口に出るタチらしい。クラウドは軽くため息をついた。羨ましいやら、羨ましくないやら。
「いい人…か、どうかは分からないが、無駄な争いを好まない質なのは確かだ。」
「そうなんスか?」
「俺もひとつ借りがあってな。何とは言えないが…」
「セフィロス絡みッスか。」
「…。」
 沈黙は肯定なり。思わず噴出すティーダだった。クラウドは咳払いを一つ。
「俺の事はどうでもいい! …普段が見た目より穏やかのは確かだ。戦いとなれば一番苛烈なんだがな。」
 ごまかすように話を続けた。
「そーなんスか?」
 素直な疑問符が返ってくる。新入りのティーダはまだゴルベーザの戦いを見たことかないのだ。
「他の連中は…俺を含めだが、戦いを楽しんだり嫌がっていたり…遊びなり手抜きなりがあるだろう。だがあいつは始まったら全力で叩き潰す。他の事など考えていないって風にな。とことん容赦ないぞ。」
「強いんスか。すっげー遅そうだけど。ボール避けなかったし。」
「速くはないが、エクスデスほどじゃないし…。魔法も剣もいけるからな。そういう点でも隙がない。」
 お前に比べたら誰でも遅いよ。という言葉は癪なので言わずにおいた。そんなこと露知らずティーダは純粋にクラウドの言葉に驚く。
「剣もいけるんスか! ってそりゃいけるかあの体格なら。」
 魔導士と紹介されて心底ビビったのだ。あの筋骨には。ねーよと。
「ふーん…なんか色々ギャップあるんスね。」
「確かに、そうだな。深く考えたことはなかったが。」
 クラウドの言葉に、ティーダは少しの間考え込んでいるようだった。

 

「よっし決めた!」
 ぴょい、と音がしそうな動作でティーダはパイプから飛び降りる。
「俺ちょっと、アイツと仲良くなってくるッス!」
「は? …まあ、ここで話の通じる人間は貴重だからな。止めはしない…。」
「クラウドも行くッスよー!」
 と、いう間に左手を捕まれ引きずられていた。
「はあ!? なんで俺が!!」
「一番人間っぽいから!」
「実は人外みたいな言い方やめろ! 俺は興味な…!」
「仲良くなったらまたセフィロスから助けてもらえるかもよ。」
「行こう。」
 あっさり折れるクラウドだった。

 

 

 どこにいるんスかねー。月の渓谷にいることが多いようだが。あ、あそこに居るのってティナだっけ? ああ。ケフカの手下にされている気の毒な娘だ…。じゃあ一緒に連れてくッスー! おい!

  
 クラウドを右手に、ティナを右手に、楽しそうに渓谷に向かうティーダ。
 袖すり合うも来世の縁。輪廻を打ち砕く変化がほんの少しだけ産まれたのかもしれない。カオスに上った太陽の力で。

クラウドは絶対ティーダに押し負けている。異論は認めない。
これがこの後13回めのキャッキャウフフに繋がるんですねジュルリ。

しかしあんまり暗くないなこのティーダ。ま、親父のこと抜けばこんなもんだよ…ね…?

「行こう。行こうよ。」って言わせるかどうかちょっと悩んだ。