アリシアはもう面倒になっていた。
何に、と問われれば上手く説明はできない。全てに、なんて言う程ロマンチストじゃない。単にやる気がないだけかもしれない。生きるということに。
だから、自分をたった今、深夜、表で、人通りのない森の脇の道端で組敷く男共を目の前にしても、別にいいかぁ、とそんなやる気のない事を思うだけだった。元よりそうやって生計を立てているのだ、今更どうこう騒ぎ立てるような事でもなし。顔はとてもじゃないが、普段の自分なら鼻の骨を完全に陥没させているそういう造形なのだが、それすらどうでもいいと思えてしまう程には、面倒になっていた。
ただ、もう一人木影に誰かいるのが気になった。普通の女ならこんな状況で、ましてや動きもしない気配になど気がつきはしないだろうが、自分には別だった。アリシアは首だけ上にむけるようにして、唯一興味を引いたその気配にに言った。
「ねぇ、あんたは混ざんないの?」
「お前こそ抵抗はしないのか?」
気配から返事が返ってきた。その声に、彼女を組み敷いていた男達がびくりと顔をあげた。どうやら、お仲間ではなかったらしい。
ざくり、と草を踏みしめ、気配が姿を現した。
森の隙間から僅かにみえるばかりの月光に照らされた男の髪が、銀色に見えるのは錯覚かなにかかしら。と、どうでも良いような事をアリシアは思っていた。
「おにーさんたすけてぇ。」
やる気のない声でアリシアは言った。
「お前のその腕に助けは要るまい。」
男は僅かに笑い声で返した。月明かりを背にしているので、表情はよく見えないが、楽しんでいるらしい声だ。
「あらやだ、お兄さん見る目あるじゃない。」
アリシアもまた笑って返した。余裕の男に対抗心が湧いて、なんだか少しやる気が出た。
「いてぇ!!?」
彼女に馬乗りになっていた男が一人、弾けとんだ。鮮血が散る。二の腕に10センチ程の、鮮やかな切り傷があった。
「お退き、下郎。私を誰だと思っておいで。」
アリシアの目は、別人のような殺気を孕んでいた。
「ありがとぉお兄さん。」
ぱんぱん、と服についた草埃を払いながら彼女は言った。質は良いがだが際どいスリットがそこかしこに入った服。胸も足も、半分以上が露出しており、保護するための衣服ではなく魅せるための造形だとありありとわかる。アクセサリーはネックレスと腕輪が一つずつと、それ程多く身につけている訳ではないが、それは質素なのではなく、そんなもの無くとも彼女が十二分に美しいからだった。何よりもその美を引き立てるものは女は生まれながらにして持っていた。
自分を最高に美しく魅せる方法を熟知した女は、その腰まで伸びた美しい金髪を掻きあげ、艶やかに風になびかせた。
波打つ金色の海の中で、彼女は妖艶に笑った。
幾人もの男を虜にしてきた、魔性の瞳で。
「私は何もしていないがな。」
予想外に淡白な声に思わず腰砕けた。
このあたしの最高のアクションをみて無反応とは、やるじゃないの。そう思いつつ、一瞬で自分を立て直したアリシアは負けじと淡白な声で返した。
「ま、そうなんだけどさ。ちょっと憧れるじゃない。言わせといてよ。」
そう言って目の前に立つ男を見上げた。そしていつもの様に瞬時に値踏みを始める。
かなり大きい。自分も170センチを越える女としては相当な長身だが、それと比較してこれだけ見上げるということは、2mを確実に越えているということだろう。黒いマントを羽織った体格もそれに見合った相当の筋肉質だが、顔は逆に良い造形だ。超美形、という程ではないが、余計なものがそぎ落とされ、すっきりした顔立ちとでも言えばいいだろうか。むしろ知的というか、頭の良さそうな顔かたちなのだが、この筋肉の上にのってもさほど違和感がないのが不思議である。肌は褐色がかっているだろうか。宵闇なので瞳の色ははっきりと判別出来ないが、肩まで伸びた緩く波打つ髪は、やはり銀色に見えた。
歳は20台前半というところか。案外もう少し上かもしれないが、自分より下ということはないだろう。金を持っているようにも見えないが、窮しているということは絶対にない。この風格でそれはない。それにしてもこの異様な冷静さ、以外と女慣れしているのだろうかと思った。しかしすぐに思い直す。女慣れするほどこの街にいるなら例外無く自分の事は知っている。それでこの無反応はない。絶対ない。それは自惚れではなく間違いない事実だった。
ならば迷子のおのぼりさんかと思い、試してみた。
「お兄さんこんな時間に何してんの?遊びにいくなら街はあっちだし、こんな外れじゃあさすがにウリの女だって立ってないわよぉ。」
アリシアは街並を指差してそう言った。知的で物静かに見えるこの男が、花街へ遊びに行く姿など少々想像し辛かったがこの街にやってくる男の目的など、ほぼ全てがそれだと断言して構わない。精々「表」か「裏」か、どの程度のレベルかというだけの話で。
「特に目的はない。暇潰しに歩いていただけだ。」
本気に取るなら、例外中の例外だったようである。さすがに唖然としてもう一度男を観察しする。アリシアの男に対する観察眼は、百発百中と言って過言ではない。生易しい数の男など見てきてはいないから。そして、その彼女の目をもってして。
とても、取り繕っている表情には見えなかった。
おもわずアリシアは吹き出してしまった。
「なーにそれ! わざわざ女の街トロイアまで来てなぁにしてんの? 面白いお兄さんねえ。」
そして久々に、本当に久々に彼女の食指が動いた。
「ヒマなら、あたしと遊ばない?」
トロイアの裏町で「女王」と称される彼女は、酷く天の邪鬼な性格でも知られていた。
バルバリシアは好きです。大好きです。FF4女性キャラでダントツ好きです。
すいません、ゲームとえらいこと性格違ってすいません、最初にプレイしたときの印象がお水系だったんです何故かそれも気怠いカンジの_| ̄|◯
ゲーム…むしろ武人系のバリっとした性格なのに…。
椎名林檎の「歌舞伎町の女王」が俺のバルバリシアのイメージです。
以降、トロイアの設定とかけっこう好き勝手にやらしてもらいますのでご了承くだs アッー!!
あと、ルビカンテSSとの時間軸とか年齢設定とか、矛盾がおきてくるようでしたらひっそり修正したりきっとすr アッー!!
2010.7kuuさまより挿絵いただきました!
バトルじゃバトルじゃあああ!!( ゚∀゚)o彡゚