兄さんとバレンタイン 4

 


 チャイムのなった玄関を開けると。そこにアリシアが立っていた。

「はーいセオドール元気?」
「…お前は昨日の今日でよくもノコノコと…」
 さすがにまだお怒りの様子なセオドールの背後から、ひょこっと顔を出したのはジェクト。
「お、ネーちゃんじゃねえか。」
「はーいキング。昨日はいい試合ありがとね。」
「だっはっはっは! 一生の思い出にしな! しかし驚かねーな。」
「いると思って来てるもの。」
 ねめつけるセオドールの視線を無視して、アリシアはヒールを脱ぎ優美に上がりこむ。
「聞いたぜ、幼馴染なんだってなあ。」
「腐れ縁よ、むかーしこのへんに住んでたってだけ。おかげで女ども事あるごとにアタシに泣きつきやがってさあ、アタシはこいつの 部下でも取り巻きでもないっつーの。」
「…だから私に言えば良かっただろうが…!」
「タダで言ってやる義理なんかないでしょ、アンタの無知と鈍感が原因なんだから。こんくらいやらないとアタシの…ついでにあいつらの溜飲が下がんないわ。わかったか。」
「…っく…!」
「ま、今回はネーちゃんの言い分に歩があるわなあ!」
 勝ち試合の翌日で気分がいいのか、ジェクトはアリシアの側について豪快に笑っていた。
 居間にはセシルとティーダ、カイン。それに、迷惑をかけたお詫びに逆旅行へ招待されていリディアがいた。
「あ、アリシアだ、こんにちは!」
「はーいガキども元気ぃ? 今回の売上でおみやげ…。」
「あ! 魔女だ魔女が来たッス!!」
「きょ、今日は一人、なの…?」
「相変わらずケバい女だな。」
「黙れガキども。セシル一人で食べていいわよ。」
 そう言ってテーブルの上にどかんと置いた、結構な大きさの箱。セシルが開けると出てきたものは…
「…チョコレートケーキだ!」
「すげえデケェっス!!」
「え、これたべれるの? にせものじゃないの?」
「…これ…テレビで見たぞ、バラムドールのケーキか…!」
「そーよ、アタシの美貌とコネの賜物。一般人は2ヶ月予約待ちデフォなんだから感謝しなさい。」
「…素晴らしい嫌がらせだな…」
「アンタは食べなくていいわよ、チロルでも食っとけ。」
 さすがに毒虫を噛み砕くセオドールを、アリシアは風の如く飄々とスルーしていた。

 

 わいわいと騒ぐ子どもたちを横目に、ジェクトがニヤニヤしながら尋ねる。
「チロルっちゃあ姉ちゃん。来年の試合も13日からでいいのか?」
「もうやんないわよ。」
 つらっと、そう言われた。
「あ!? なんだよつまんねぇな。」
「ネタ割れちゃったじゃない。それにアンタがこっちについてる限り勝ちの目薄すぎるからねぇ、もう半分くらいから不参加表明もらっちゃったもの。いいもの見たから萌え禿げたって。」
「…いいものとは何だ…心当たりがない…」
「男にゃわかんないわよ。」
「俺にもわかんねーが、わからねぇほうがいい臭いがプンプンするぜ。」
「賢明ねキング。」
 そう言ってアリシアは高らかに笑った。

 

 

腐った臭いがプンプンするぜ

 

 

 

 台所からナイフと皿を持ってきたセシルが、アリシアの横で言った。
「ねえアリシア…。僕一人でこんなに食べれないから、みんなで分けていい…?」
 こくり、と小首を傾げる。
「いーわよアンタがそうしたいなら。でも、それ学校でやっちゃダメだからね。学級会議沙汰になるわよ。」

 どっと家中に笑いが巻き起こる。
その話はもういい! と子供のように怒るセオドールに、小さい頃はこいつ可愛げあったんだろうなあ、と妙に思いを馳せてみるジェクトだった。

 今回も妙に可愛いものを見た気がするのだが、イマイチ思い出せないのが残念だった。

 

BACK RESET

ちょっぴりだけ…BLっぽいものを意識してやってみたバレンタインネタ、いかがだったでしょうか。発酵してましたでしょうか。

デフォではゴル様を神かなんかだというレベルで崇拝しているバルさんですが、
現パロにあたり四天王の中で兄さんと対等なやり取り出来る人ってだれかなー と考えた時、すんなり降りてきたのもバルバリシアでした。
ルビはいくつになっても何処ででも、ゴル様を家族3割上司7割くらいの気持ちでいてほしいし、スカルはものすごい歳の差逆上下関係、っての結構気に入ってるんでそのままでいて欲しいかも。
カイナッツォは絶対敬語使ってないと思うけど、ケンカで負けて上下関係(暗黙)出来てるイメージ。無論セオ兄さんに自覚なし。生意気な口聞いたあとにちらっと見られると、ビクッってするようなレベルで。
ま、パソバカ講座で何度かやったんで驚きは無いと思うんですが。書いててめっちゃ楽しいやり取りだったよ。

 

ところで、このあとジェクゴルに雪崩れて行く話とかに誰か上手に醸してくれませんか。
俺には出来ねぇ。